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ひろいのぶこ先生の講演会とシンポジウム「自然布の行方」まとめ

<自然布とは>
•自然の素材から人の手によって糸から布にしたもの
•素材も動力機械にかけない
•植物繊維のみ(この会の定義では)
•古代織りとも言う

<いろいろな自然布について。現状など>
1 シナ布(今回は、山形と新潟県村上市の産地が参加)
 シナノキの樹皮。10〜15年枝打ちをしながら育てたものを切り倒して樹皮を採る。一度とったらまた10〜15年採れない。梅雨時期にとり、乾かす。夏に灰汁で煮て、ぬかで発酵させ、柔らかくしてから糸にする。3ヶ月ぐらいで糸にできる。糸は縒りをかける。
 シナ布は、強靭で水に強く、涼しく、軽い。


2 藤布(今回は、京都府与謝野町の産地が参加)
 藤のつるの皮。5年ぐらい経ったものが最適。布は肌に良いとされ、昔から使われてきて、古い文献にも載っている。
布は水に強く、柔軟性がある。藤糸で織った帯は使うほどにしなやかになり、体にフィットする。かつては全国にあり、肌着にも古くは使った。

3 葛布(今回は静岡県掛川市と島田市の産地が参加)
 かつては沖縄から北海道まで産地があった。植物はつる性で、伸びた先で根を生やすので、糸にするときの方向性は気にしない。6〜7月の梅雨時に収穫し、一年かけて糸にする。湿気を好む。発酵させるのでつやがあり、公家が葛袴として使っていた。葛衣(かつい)は、人が最初に着た服とも言われている。遠州では縒りをかけず、平らなまま織る。緯糸のみ。
 葛で体を拭くと体に良い。

4 大麻布(今回は栃木県大麻博物館の館長が参加)
 大麻は戦前までは自家用衣服や畳の縁、縄などにして普通に全国で作って使われていたが、第二次世界大戦後、アメリカが禁止した。今は許可制で育てられる。植物は雌雄が同じ畑に出てくる。繊維はチューブ構造で、空気を閉じ込め、夏は湿気を外に出すので夏涼しく冬暖かい。手績みの時は天地を保持することで植物の性質を保持できる。3ヶ月で繊維にできる。冬、雪の間に糸を作り、春に織ってさらす。伊勢神宮の神宮大麻というお札にもなっており、清めの道具となっている。繊維の性質としては芭蕉、綿、シナや藤の中間に位置するといえる。

5 和綿(今回は千葉と埼玉県で手紡ぎ手織りをされている方が参加)
 綿の実の周りについた綿毛を紡ぐ。春に種まきをし、5、6ヶ月かけて生長、秋に収穫する。綿うちをし、1kgで1反の着物ができる量の綿が採れる。紡ぐのは、一人が毎日紡いで1ヶ月で紡げる。和綿は繊維が短い。吸湿性、速乾性に優れ、暖かい。日本の綿は日本の気候にあった布が作れると言える。木綿往生という言葉があり、着物にしたあとはおしめ、ぞうきんそして灰は肥料にとして使いきっていた。

6 苧麻(今回は宮古上布の産地が参加)
 1mに生長した麻(赤苧や青苧)を昭和村では年1回、宮古島では年4、5回収穫する。繊維は1mぐらいある。宮古島ではミミガイで繊維をとっている。布は強靭で三代もつと言われる。汗もすぐ乾き、風が体を通り抜け、涼しい布が作れる。最近は細い糸を作れる人が減ってきている。

7 芭蕉布(今回は喜如嘉の産地が参加)
 芭蕉は2、3年で育つ。秋から冬に倒し、繊維を採る。反物に繊維は1kg必要だが、一本の芭蕉から反物にできる糸は少ししか採れない。芭蕉布のことははせおとも言う。色が良く、なめらか。軽くて涼しい。やぶれやすく寒さと乾燥に弱い。しかし海水に強く、船のともづなに使われていた。

☆日本では植物が多いので、現在残っている自然布だけでも他国より種類が多い。上記の7種類以外にも太布、アッシなどもある。ちなみに他国の自然布(動物性も入れて)というと、ヨーロッパではウール、リネン、中東ではサイザル(サボテンの繊維)、木綿、南国ではラマ、アルパカ、ウール、サイザル、韓国では大麻、苧麻、葛、絹、木綿が使われている。

 日本に残っている自然布は、大量消費の都会から離れた少し不便な所に残った。また、服薬という考え方があり、薬になる染料で染めた衣を着ることで肌から薬を取り入れられる、と考えられていた。それでも効かない場合には煎じて飲む。これが内服薬である。

<機械と手仕事の違い>
 素材が同じでもできるものは別物。化学的性質も物理的性質も違う。和綿の糸も、機械で作るとタンパク質が少ないため染色しても染まりにくいが、手紡ぎをすれば空気がたくさん入り、染料のひっかかるすきまが多いため良く染まる。染める回数が少なくてすむので糸も強い。苧麻や大麻、芭蕉など手績み(ある程度の長さの糸をつなぐこと。綿のように糸を引き出すのは手紡ぎ)された糸は天地が保持され、植物の性質も保持される。

<自然布の今後>
 自然布は、日本の文化である。経済だけ考えたら自然布は残らないが、自然布に内包する知恵は無くしたくないものである。昔から日本人は季節の巡りの中で、この季節はこれ、という仕事をしながら季節がくると自然に体を動かして仕事をしてきた。自然布を作るのは、今の人には面倒なことである。しかしその面倒なことに少し時間を使ってみると、ものの捉え方が違ってくる。日本に根ざした心(文化)と対話できる。心が解放され、生きやすくなるきっかけを与えられる。満足感、安心感、ものを大切にする心を得られる。また、自分で材料を栽培(採集)すると、自分で材料を種類わけでき、いろいろな種類の繊維が手に入る。

<私の感想>
 どの産地も後継者不足に悩んでいる。原因は糸づくりが面倒なことと、収入が十分に得にくいことだろう。織り手はいるが、糸を作る人が少ない。
 収入については、魅力的な製品を作り、上手に宣伝をするなど、売る方法はあるだろう。
 しかしものにあふれた現代に必要なのは、製品ではなく、もの作りの過程なのではないだろうか。
 糸を作ることは、自然とふれあい、今あるものについて考え直し、ご先祖と対話し、自分の人生を見つめ直すといった大切なことたちのきっかけとなり得ると私は考える。それこそが大切なものたちを置き去りに、自然を食いつぶして成長してきた日本にとって今一番大切なのではないだろうか。

 私自身、着物を織ってみて、いくつも気づくことがあった。
 自分の気持ちとは関係なく、自然(糸)にこちらが合わせないと仕事はうまくいかないこと。先を急いでも進まず、目の前に集中して(つまり今を大切にすること)が必要なこと。何事も一気には進まないことなど。
 どれも知識としては知っていても、体験しないと本当に気づくことはできなかった。
 
 手を動かすこと。その大切さと楽しさ。

 まだ知らない人たちにもぜひ知ってほしいことである。
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現在機織りと自然ガイドを勉強中。自然、手仕事、コミュニケーションを軸に田舎暮らしをし、日本の心を学び、伝えていくのが夢です。

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